夢の人工関節置換術とは?

  • 人工関節部品 金属とプラスチックです

  • TKA術後のレントゲン 真っ直ぐで安定した膝に 手術時間 33分

  • UKA術後のレントゲン より低侵襲で骨温存が可能です

  • THA術後のレントゲン 左右対称 脚長差なし

  • 両側同時THA術後のレントゲン
    手術時間 右43分 左45分 出血370ml

変形性膝関節症や変形性股関節症による関節の痛みが耐え難くなったとき、最後の砦として手術をご相談します。

痛みなく再び歩けるようになることで、諦めていたことができるようになる。
痛みでふさぎ込みがちであった気持ちが晴れやかになる。つながりを取り戻す。

「再び農作業ができました」
「登山ガイドに復帰しました」
「諦めていた旅行に行くことができました」
「趣味のゴルフを楽しみます」
「まっすぐな歩き方になってご近所の方に驚かれました」
などなど、多くの皆様から喜びの声を伺います。
手術を無事に終えて、お元気に歩かれて特に女性の方は綺麗にお化粧されて私の外来にいらっしゃるので若返りの手術であると感じることさえあります。

そのような夢の手術が人工関節置換術であると信じています。

とはいえ、手術は怖いと感じるものです。
まずは手術に伴う痛みを麻酔方法、薬、手術手技の洗練化により現在できることの全てを取り入れて最小限にします。次に不安を解消できるよう説明と対話を重視します。

人工関節 喜びの声

手術後の患者様より喜びの声を頂きました!

何ものにも代えがたい喜びです。ありがとうございます。

人工膝関節置換術 TKA : total knee arthroplasty

人工膝関節置換術は、骨切りアラインメントと靱帯バランスの2つを達成することが成功の秘訣です。
専門的であるため語られることは少ないのですが、大切なことと思うので分かりやすくお伝えします。

【アラインメント】ブレなく手術器具を使い正しく骨を切り膝を真っ直ぐにする
【靱帯バランス】膝の内側がきつくなり外側がゆるくなって不安定になってしまった膝を安定化させる

その2つが達成されることで、真っ直ぐで安定した膝に生まれ変わります。
ここに技術や経験の差が出るように思います。

私は1mm1°の精度にこだわって徹底して妥協なく手術を行います。
手術用ナビゲーションを用いた研究で自身の骨切り精度がナビゲーションに劣らないことを示すことができました。臨床研究4)6)
この経験は精度の向上に大変有用でした。

  • 両膝変形性関節症
    うちがわが傷みくの字になっています

  • 両膝同時手術 術後のレントゲン
    手術時間 右58分 左51分
    まっすぐになり痛みなく歩けます

  • 変形が高度ですが、まっすぐに治ります
    骨欠損が大きいので特注の金属部品で補填しています

人工股関節置換術 THA : total hip arthroplasty

人工股関節置換術は、大きく分けると、前方アプローチと後方アプローチの2種類があります。
前(お腹側)から手術するか、後ろ(背中側)から手術するかの違いです。

後方アプローチは、脱臼に深く関係のある筋肉を大きく切って手術します。 
手術の視野が良くなるため、誰でも安心・確実・容易に手術を行える利点があり、私もこの手技を習得する事からスタートしました。
しかしながら、一度切ってしまった筋肉は再接着することはなく、脱臼リスクが高いことや脱臼注意動作と一生付き合っていかなくてはならないことが問題点でした。

いかに筋肉や腱を切らずに体に優しい手術を行うかが大切であると考えるに至りました。
そこで後方アプローチにおいて筋肉を切らずに手術ができないか追求しましたが、その限界も明らかになりました。臨床研究3)5)7)
時を同じくして手術手技が進化して前方アプローチの割合が徐々に増え始め、私も2施設の手術研修を経て2019年から前方アプローチを開始しました。

前方アプローチは、筋肉や腱を切らずに手術をします。これを筋腱完全温存と呼びます。
私が行うのは上向きに寝て行う【仰臥位前外側アプローチ(ALS Anterolateral supine approach)】です。

その長所は
・短い手術時間 =合併症が少ない
・人工関節部品の設置精度が高い =長持ちする
・筋腱完全温存 =脱臼しにくく回復が早い 
→術後7-10日で退院できる 手術後の動作制限がない

手術の難しさは上がりますが術後の生活に制限が少ないことは、代え難い利点と考えています。
また、左右とも悪いときには仰臥位を生かして両側同時手術も可能です。

審美性:創の小ささ、美しさにもこだわります

人工股関節術後の8cmの創部写真

術後の皮膚写真(匿名化のうえ許可を得て掲載)
大腿の前側面に8cmの皮膚切開を行いました。
横皮切 : TI transvers incision
皮膚のしわに添うため目立たず、ひきつれず、肥厚性瘢痕(みみず腫れの様な傷のこと)になりにくい利点があります。
皮膚は埋没縫合 特別な糸で皮膚の下を縫い閉じるため抜糸の痛みはありません。

手術成績と合併症 : 手術で起こりうる不利益

手術では一定確率で避けることのできない不利益を生じます。これを合併症と言います。私の経験に基づき代表的なものを記載します。

①感染 手術した所に細菌が入って繁殖すると熱が出たり、創部が赤く腫れたりします。細菌が金属に付着すると簡単には取れないため再手術を要します。

日本整形外科学会学術研究プロジェクト調査2004年では、人工関節手術における感染率は1.4%と報告されました。私の過去10年での感染は全人工関節手術で5例(0.5%)、内訳TKA5例、THA0例でした。3例は切開・洗浄手術で治癒しましたが、2例は治癒せず部品を抜去せざるを得ませんでした。感染は難治性のため現在も外来通院されて慎重な経過観察を継続しています。

②血栓 肺塞栓 なし 予防策および短時間手術が功を奏し発症経験はありません。
足を動かさない状態が続くと下肢の深部静脈に血栓(血の塊)ができやすく、大きな血栓が静脈に入ると肺にまで到達し、肺の血管をふさいでしまう肺塞栓症という命にかかわる重篤な症状が出ることもあります。発症率0.1%と言われます。

③脱臼 筋肉を切ったり部品位置が悪いと人工股関節が外れます。強い痛みで歩けなくなってしまい徒手整復を行い治します。

初回THA310例において 後方アプローチで5例(5/200=2.5%)、筋腱温存後方アプローチで0例(0/50)、前方アプローチALSで1例(1/60=1.6%)

④部品のゆるみ 幸いなことに経験がありません

人工関節部品や手術技術が進歩して耐用年数は20年以上と言われますが、人工物の宿命として不具合を起こした際には部品を入れ替える再手術(再置換術)が必要となる可能性があります。

⑤部品周囲骨折 治療は難しく難治性ですが、再置換術およびプレート・ワイヤー・スクリューを用いた整復固定術で治療します。

【対策】
①感染 ②血栓
手術前後の予防策を徹底するとともに、長時間手術の悪影響が知られていますので、1分1秒でも短い手術を目指します。

- 流れるように 戻らず止まらずに 落ち着いて
  決して急がないけれども結果早い -

③脱臼 ④部品のゆるみ
筋腱完全温存と確実な部品設置 初回手術は一度きりです。

やれることはすべて妥協なく行い完璧に作り上げることを肝に銘じます。

④部品のゆるみ ⑤部品周囲骨折
骨折予防や骨粗鬆症治療が大切です。

このようなことを包み隠さず伝えてくれるドクターは信頼できると思います。
担当の医師とよく相談されることをお勧めします。

おわりに

最後までご覧いただきありがとうございました。

痛みに悩まれて不安なお気持ちからこのページに辿り着かれたことと思います。
お力になれましたら幸いです。

不明点、ご質問等ございましたら下の合わせフォームよりどうぞお気軽にお問い合わせください。


人工関節専門ドクター 小林貴幸

powered by crayon(クレヨン)